2007年2月17日土曜日

Stevens-Johnson Syndrome

26歳の男性。特にこれまで既往も、薬物アレルギーも無し。
来院10日前より湿性咳が出現し、その翌日から熱も出てきたため市販の、アセトアミノフェン、イブプ­ロフェン、ナプロキセン、Robitussinを服用。2-3日してから(来院7日前)より口腔内に水泡、潰瘍が出現し眼瞼結膜も充血して眼脂も出現。その後も­OTCのみで経過を見ていたが軽快せず、発熱も続くために救急外来受診。
所見として典型的なStevens-Johnson syndrome (SJS)で皮膚科も診断に同意しました。
問題は原因で、このケースではマイコプラズマIgMが陽性となり(胸部レントゲンでも浸潤影あり。ヘルペスは培養、P­CRともに陰性)それによるSJSではないかということになりましたが、皮膚科は同時期に服用していたNSAIDsも原因として決して否定はできないので、この­青年には一生NSAIDs、アセトアミノフェンを服用すべきではないとアドバイスしております。ちなみに今回のエピソード以前にNSAIDを服用したときは特に­問題は無かったらしいですが。チャレンジテストはできませんし、どのように対処すべきか苦慮しております。 私個人としてはマイコプラズマ感染で一元的に考えたいのですが、疾患の重症性を加味すると皮膚科の言うことももっともだなとも思います…。
皆様のご意見をお聞か­せいただければ幸甚に存じます。よろしくお願い致します。
(by H先生)

さて、この症例に関しては皮膚科の先生のおっしゃることが正しいと思います。特に アメリカでは。以前大丈夫というのは薬物アレルギーでは落とし穴と思います。
で、結局、現実的には間違って飲んでしまってアセトアミノフェンは大丈夫という日 がくるのではないでしょうか。
SJSに関しては、再投与試験は禁忌(大変になったことがあるようです)、1型ではな いのでプリック検査も皮内検査も意味がなく、LSTは陽性でも陰性でも感度/特異度と も十分低いので将来的計画に影響はありません。一応、日本ではパッチテスト!!と いうのがスタンダードにもなっているようですが少なくともアメリカでは medicolegalにはやらない方が良いですし、これの意義に関して納得のいくデータを 私個人は知りません。どなたかご存知でしたら教えてください。
(by SLIHAR先生)

貴院の皮膚科の先生の仰るとおり、薬疹の可能性も考えられると思います。
原因の追究に関してはチャレンジテストはSJSはやはりやらないほうがよさそうですね。­SLIHAR先生もご指摘の通り、パッチテストやDLST(リンパ球刺激試験)は感度特異度とも高くはなく、ともに約半数くらいの陽性率のようです。
皮膚科医としてこの症例を検討する場合、まず薬疹の可能性が高いのかを考えます。皮疹の分布(薬疹によるものだと体幹中心に、感染によるものだと四肢末梢に環状­の紅斑がでやすい傾向があります)や薬剤中止により改善してきたかなどの臨床症状を見ます。この青年の場合内服前より発熱、咳などの臨床症状があったこと、マイ­コプラズマ陽性ということよりマイコプラズマによるものが考えやすいですが、やはり薬疹の可能性は否定しきれないので、私も内服していた薬は避けてくださいと言­うと思います。ただ今後すべてのNSAIDsやアセトアミノフェンが使用できないというのも酷なので、例えばNSAIDsであればすべてのNSAIDsがだめと­いうわけではなく、構造式が違えば抗原性が違ってくるので内服できる薬はあるのではと思います。構造が異なるものを1/100量から内服してみて内服できる薬を­探すという方法をとってもいいのではと思いますが、その際にはリンパ球の活性化が落ち着いた6週以降がいいようです。また、絶対に交叉感作が起こらないとは言い­切れないので文書で承諾を得たほうがいいと思います。(アメリカでは難しいでしょうか?) NSAIDsとアセトアミノフェンではNSAIDsの方が薬疹のリスクが高いと記憶していますが(間違ってたらごめんなさい)、アセトアミノフェンもSJSを含­めた薬疹の報告が多数認められますので、難しいところですね。
以上、何の解決にもなりませんが、私の見解を述べさせていただきました。
(by Y先生)

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