2007年1月20日土曜日

成人Still病(ASD/AOSD)

(「高フェリチン血症の症例」より承前)
M先生、成人スティルのご経験がなくても先生がしっかりとした臨床医であるので、 病状もよくなっていて素晴らしいと思います。成人スティルはなんだかんだ言っても 珍しい病気で、アメリカでの大家のCush先生も年に1-2人新患を見る程度といって いました。
一通り読むなら Ann Rheum Dis 2006;65:564 572. がよいと思います。基準も、山口先生、Cush, Fautelと三つ並んで比較してあります し、各臓器の症状なども記述されています。 皮疹に関しては 治療と臨床 2002 1432 のものが日本人ですから見やすいので研修医の教育には僕は使っています。
皮疹は典型的には掻痒感のないものですが、発症当所は掻痒感がある ものもも珍しくありませんし、1日中出ていることもあり発熱とともに少し悪化と言 うこともあります。しかし徐々に典型的な皮疹になってくることがありますのであき らめずに観察することが必要と思います。僕の印象としては再発時のほうが典型的な 皮疹が多いです。
・ASDを診断するにあたり、何をもって確定といえるか? に関しては、基準があるぐらいですから結局はこれを参考にしながら除外診断となる と思います。Rheum-dora先生も書かれていましたが、基準を満たしても満たさなくても診断を除外も確定は出来ないのはSLEと同じです。でも、100%確定しないと治療が出来ないわけではないので、治療が禁忌となるような別の疾患でないことをある程度確定してからは診断的治療と言うことも考えてよいと思います。ということで、今回 NSAIDを開始されたことは的確な判断だったと思います。以前、アメリカ時代にNSAID 恐怖症的なチームがいつまでもNSAIDはじめずに心外膜炎になった症例を見たことがあります。
・NSAIDはどのくらいの期間使用するのか?
誰か答えをご存知でしょうか?CRPが上がっていますので、これと臨床症状を見て、となると思います。炎症が消えて症状がよくなってから僕はEBMではありませんがTaperします。
・ステロイド導入(もしくは他薬剤)のタイミングは?
NSAIDが無効または禁忌の場合ではないでしょうか。発熱、関節症状だけならNSAID開始し少なくとも数日は様子を見て。改善傾向なら7-10日間はどれくらいよくな るかを見ています。1つでダメでもある程度効果があればNSAID変更もします。ナイ キサンが効かなければ、僕はインダシンはあまり使わないのであきらめることも多いです。皆さん、どうですか?もちろん、NSAIDつかっても悪くなるようならあまり長 く待つのはお勧めしません。
・ASDを治療するに当たり注意する点は?
サルコイドーシス同様にnever be sureじゃないでしょうか。特に診断当初はある程度ほかの疾患も常に疑いながら、注意深くです。NSAIDやステロイドはAOSDじゃなく ても一時的に症状がよくなることはありますので。あと、ステロイドをあまりだらだら使いすぎないことだと思います。もちろん必要な人はいますが、手首の関節症状だけとかなら関節内注射をお勧めします。関節炎だけのために長々と経口ステロイドが減らせないと言うのは、他の臓器に問題が起こりにくい疾患としては避けたい所です。
(by SLIHAR先生)

AOSDはIL-1 antagonist anakinraが著効するのですが日本にないのが本当に悩ましいです。
☆ ASAs and/or NSAIDs
1/4ぐらいは効くといわれています。これの根拠となったのがカナダから62例のCohortです。Pouchot et al. Medicine 1991 どのNSAIDsなのか記載はありません。また反応した群は予後がいいという記載もありました。 ただASA/NSAIDsに関してはsalicylateのレベルを15-25mg/dLを超えないよう肝機能をみながらやりますがそれがすぐにできない日本ではそのようなDoseは使えません。たとえばアスピリンにして3-4gは使いますので。日本のレポートでもたしか3gぐらいまで使ったのはあったかと思います。
Taperについては私ももしSteroidが必要になるようであればステロイドを先にTaperしています。Steroid Sparingとしての要素もある­症例は経験されると思います。もちろんこのときも炎症反応(フェリチン>ESR, CRP)を診ながら、患者さんの訴えも聞きながらです。ときに線維筋痛症を合併していることもあるので注意してください。
☆ Steroids
ステロイドについてはSLIHAR先生ご指摘のようにNSAIDsが効かない群ということでしょうか。私は生命を脅かすものがなければPSL 0.5mg/kgで始めたり­しますが効かないことも多く経験します。文献的には1/3が60mg/dayぐらいの量が必要になるということです。実際は数日0.5mg/kgでやって熱が下 がらなければ1mg/kgに増量することもあります。 あと一般的に予後が悪い因子として、Root Joint(肩とか股関節)、早期から多関節炎なものに関しては確かに関節の症状以外にも熱の下がりとかも含め0.5mg/kgでは効かない症例が多いと思います。
副作用も考え、PSLがなかなかTaperできない場合、MTXを少量(2.5mg)をくわえてもいいかもしれません。うまくいった場合、順番としてはTaperする順位はPSL>MTX>NSAIDsでしょうか。
☆ 治療で注意する点:
・原疾患の悪化 およびTTP, HPSなどの合併
・薬の副作用
・線維筋痛症の合併
☆ 皮疹について:
前胸部などの躯幹、四肢末端ではなく比較的近位の四肢というのはみなさんご存じだとは思いますが。当院に赴任し2例Urticarial vasculitisで­はと思うような24時間消退しないUrticariaのAOSDを経験しました。ともに四肢末端、足背、手背にもでていました。いわゆる典型ではないですが 、Urticariaの場合末梢にもでるのではと推測しています。掻痒はあることが多いので、あとは見た目とBiopsyですが。
(by K先生)

高フェリチン血症の症例

○ 現在ASDではないかと思われる患者さんを担当しています。 症例経験がないので皆様にご意見いただければと思います。

簡単に症例を提示しますと
患者:74歳女性
主訴:発熱、関節痛
現病歴:生来健康。ADL自立。病院通院歴なし(内服もなし)。
2006年の12月初旬より倦怠感、食欲低下、微熱認め、 その後掻痒感を伴う皮疹が出現(詳細不明)し、近医にて抗ヒスタミン薬などを処方 される。
12月中旬より咽頭痛出現、その後発熱(38-39℃)や両膝関節痛認め、 徐々に両下腿浮腫もみられたため某外科病院に膝関節炎ということで入院。 膝関節液の培養は陰性。クラリス→セファメジン→メロペン投与するも熱、炎症反応 あまり改善せず(なぜか)ソルコーテフ500mg投与、一旦解熱するも原因不明という ことで 12/28当院紹介入院となりました。
(年末ぎりぎりで転院されてこられしかもステロイドが投与され ぐちゃぐちゃの状態で送られてきたという感じです・・・。)
当院受診時は、38℃、SpO2 93%(室内気)、sBP140台、HR90bpm・整 頚部・右肩の圧痛、両膝の圧痛・発赤腫脹、両下腿浮腫、頚部から前胸部にかけての 紅斑を認めました。
データーとしては
WBC 27340/ul(Band 7%, Seg 90%)、Hb 12.0 g/dl,Hct 37.30%,Plt 21.6万,
PT-INR 0.97, APTT 23.5, Fib 656 mg/dl, D-dimer 7.2 ug/ml
ESR 97mm/hr, CRP 15.54, AST/ALT 23/16 IU, BUN/Cr 17/0.6mg/dl, TSH 1.15, FT4 1.41, MMP-3 180.6ng/ml, RF 2.2IU/ml, C3 123mg/dl, C4 38mg/dl, CH50 42.8U/ml, HbA1C 6.7 といった状況でした。
レントゲン上 軽度 CP angleはdullになっていました(胸水貯留がCTで確認)。
年末であまり検査もできずとりあえず各種培養採取し、 MEPM投与し経過をみていました。 日中は36~37℃台なのですが、夕方~夜になると決まったように 38~39℃の発熱を認め、βラクタム系の抗菌薬は無効と判断しました。
年が明け、ANA<40, P-ANCA<10, C-ANCA<10, パルボB19IgM陰性, フェリチン10898ng/ml(<90)という結果が返ってきました。
以上かなり症例提示を端折っていますが、 感染症や悪性腫瘍は、培養や画像検査上(CT、胃カメラ)否定的であり なおかつ抗核抗体などが陰性。 2週以上続く発熱、関節痛、軽度の肝脾腫、咽頭痛やフェリチン著明高値から ASDを疑い、NSAID投与(ロキソニン3T3×)を開始し、現在に至ります。
またそれと関連があるのか不明ですが 入院前後より認知症がすすんでいるのではないかという家族の指摘もあったため、 髄液検査をしたところ無色透明、初圧13cmH2O、細胞数52/3(リンパ球47/好中球5) TP27、Glu74と軽度細胞数の増加がみられ、頭部MRIでは右内包後脚にdiffusionで高 信号域を認め 新鮮脳梗塞も認めました(focal signはなし)。
UpToDateにのっているASDの基準(J Rheumatol 1992;19:424)は満たしています。 ただ皮疹は確かに熱が出たときに紅斑として体幹を中心に広がるのですが 熱がないときでも頚部~前胸部には紅斑がみられ、掻痒を伴う時期もあったというこ とで 皮膚科は蕁麻疹様紅斑と診断しており、いわゆるサーモンピンク疹の典型ではないと いうコメント でしたので、皮疹に関しては?のところがあります。 (私自身アトラスでしかみたことがありませんので判断に苦慮しています)。

ここで質問ですが、
① ASDを診断するにあたり、何をもって確定といえるか?
② 髄液所見ならびに脳梗塞はASDと関連するのか?NSAIDはどのくらいの期間使用するのか?
③ ステロイド導入(もしくは他薬剤)のタイミングは?
④ ASDを治療するに当たり注意する点は?
など教えていただければ幸いです。 臨床情報に不足があるかと思いますので適宜ご指摘してください。
(by M先生)

こんばんは。先生が提示された症例は、 病歴、身体所見また検査所見から典型的なAOSDだと考えます。 除外診断も尽くされているようですし。
AOSDと髄膜炎の合併の報告もあるようです(ロキソニンによる可能性もありますね)。
ロキソニンによる治療効果はいかがでしょうか?
私が気になるのは、認知症の進行です。 AOSDのため?入院による環境の変化?
(by Y先生)

髄液検査をされている点、素晴らしいです。 不明熱の診断には、必須かと思います。
神経感染症を扱う上で、ひとつ大事な点があります。 髄液糖が、74。通常は、正常値です。 しかし、この方は、HbA1c 6.7と糖尿病もしくは耐糖能異常があります。 髄液検査をされた際に、血糖を同時に測定していますでしょうか? 熱があったり、炎症などのストレス下にある状況なので、高血糖が予想されます。 仮に、血糖が200であったとしましょう。髄液糖/血糖の比は、1/3前後になります。 初期から診ていれば、典型的な細菌性髄膜炎は否定できたかと思いますが、抗生剤も 入っており、Partially treated meningitisは否定できません。 経過もあわせると、ウイルス性の脳炎・脳症、真菌性、結核性、癌性髄膜症を思い浮 かべます。 認知症の症状が進んでいるというのも、中枢神経症状であるかもしれません。
髄液クリプトコッカス抗原はどうでしたでしょうか? 診断にいつも苦慮するのですが、結核性髄膜炎もステロイドが入ると、少し改善した ようにみえることがあります。 髄液PCRの感度の問題から、結核性は、最後まで否定しにくいというのも事実です。 MRIで血管が侵されているのも、気になります。脳幹、脳底部をMRIで見直してみてく ださい。
白血球増多、CRP上昇、皮疹などは、髄膜炎のみでこれだけ上昇することは、まれで す。しかし、他の原因でも起こる可能性はあります。 胸水の性状は滲出性?漏出性?肺にも炎症の主座があるかもしれません。
疑問点を少し整理しましょう。 私個人としては、検査所見で注目すべきは、髄液細胞数増多です。 これを切り口に症状などを見直すことが診断の近道かと思います。
膠原病に伴う髄膜炎もしくは、髄膜炎現象もありうるかと思いますが、Adult-onset Still diseaseで、どのくらいの頻度で起こるか私には分かりかねます。 すいません。
(by N先生)

発熱、皮膚症状、高フェリチン血症から成人スティル病(AOSD)は鑑別に上がりま す。胸水貯留もAOSDで起こりえます。但し、発症年齢、AOSDに典型的ではない皮膚症状、認知障害の進行、髄液の pleocytosis、低酸素血症(胸水貯留によるものかもしれませんが)は必ずしもAOSDに典型的ではなく、著しい高フェリチン血症を来たすもう一つの疾患(群)である Hemophagocytic Lymphohistiocytosis、とりわけAsian-variantと言われるIntravascular LymphomaによるLAHSの可能性を疑わせます。
診断はしばしば困難です(小生も先生の提示された臨床経過だけでは次の一手が思 いつきません:十分な量の髄液をCytologyに提出する?)。
その他、N先生がご指摘のような中枢神経病変(感染症など)の可能性はあるかと思います。Milliary tuberculosisによるHemophagocytic syndromeと牽強付会な (?)鑑別も一応挙げておきます。
AOSDは現時点では結局implicit gold standardによる臨床診断で、Yamaguchi criteriaは「実際にはAOSDではない患者さんをAOSDと診断してしまう」Type 1 error の可能性があります。AOSDにおけるIL-18の著増もいわれていますが、cut-off値はまだ定められていないと思います。
(by Rheum-dora)

AOSDの他にはNon-Hodgikin Lymphomaの特殊型IVL(intravascular lymphoma)、あとはお馴染みTB(不明熱で忘れないようにという意味で)を鑑別に入れたいです。
昨年少しだけ類似した症例をたまたま経験しましたので、ご参考になれば幸いです。 70台女性で1ヶ月の不明熱と頭痛、炎症著明で肝機能異常有り、不明熱w/uをTemporal artery biopsy、liver biopsyまで行われ全て陰性。一応biposy negative TAとしてsteroidにて治療開始したが、解熱も一時的で、その後(Nonpruritic or pruritic?) macular rashと関節痛が出現し、skin biopsy(皮疹の有無に関わらず4箇所)施行。一方次第に物忘れがひどくなり、徐々に意識障害も認めてきたため、LP、MRI(1回目は頭痛症状のみのとき­でNegative、2回目)を行い、それぞれpleocytosisおよびwhite matter にhigh intensity T2を認めた。
このケースでは結果的には皮膚生検がIVLの診断に結びつきました。患者さんはCHOP後今も元気にされております。IVLの診断は難しいため、検査のひとつと­してrandom skin biopsyを行うことを勧めている論文 もあり、たとえ皮疹がなくても診断がつく場合もあるそうです。CNS症状は2/3のケースで認められstrokeやdimentiaの症状、encephalo­pathyとしてくる場合などがあるようです。AOSDは除外診断が前提になっていますし、生命予後を考えると鑑別診断にあがってくる疾患の方がCritica­lでしょうから、積極的にとれる組織を探しに行っていただくことになるのかな、と思いました。
(by K先生)

不明熱科?としては、 血球貪食症候群(HPS)の原因疾患の中でも、粟粒結核や悪性リンパ腫の診断には、苦労することがあります。 特に先般、Rheum-dora先生、K先生が述べられているようにIVLの診断は難渋します。 感染症、悪性腫瘍、膠原病の3つは挙がりましたが、もう一つ触れられていない薬剤などはどうでしょうか?気になります。
次の一手は、骨髄穿刺ではないでしょうか? そして、皮膚生検。病院の診療科の問題もあるので、皮膚生検がやりやすい環境であれば、皮膚科医と病理医によく説明した上で、皮膚生検が先でもよいと思います。 その後、機会を見て、髄液の再検も、された方がよいと思います。 自験例でも、2回の骨髄穿刺と1回のジャム生検(骨髄生検)で、やっと診断に至った例があります。 肝生検も検討していました。侵襲の少ない順番と検査前確率を考え、選択されれば良いかと思います。
(by N先生)

どうやらこの症例は、dementiaがキーワードのようですね。 たしかにDementiaにfocusすると、AOSDでは説明がつかないと思います。 ここで一旦、病歴と身体所見に立ち返ってみましょう。 Dementiaについてのもう少し具体的な経過や程度(例えばMMSEやHDS-R)の情報が欲しいです。 また、頭部MRIの右内包後脚の病変で通常起きる症状は左片麻痺と構語障害で、dementiaは起きません。 MRI所見についても詳細が知りたいです。
(by Y先生)

○ 髄液の抗酸菌培養は行っていますが、クリプトコッカス抗原は提出していません。 血糖は130台でしたので、確かに髄液糖は低めかと思います。 髄液に関しては後日フォローする予定にしています。
さてその後の経過ですが、NSAIDを使用しはじめてから 解熱し、酸素化良好、関節痛も改善し、 データー上もWBC 9940、CRP 7.45と改善傾向をみせていました。 また解熱してから認知症(?)のような症状も少し改善しています。 入院時のMMSEは20点前後でした(すいません詳細覚えていませんので後で確認しま す)。また再検してみようと思います。 皮疹は一部色素沈着化していますが、まだ残存しています。
しかし昨日の血液検査にてHb/Hct 9.30/29.90、Plt 10.8万と血球減少がみられまし た(血球貪食症候群でしょうか?)。 原病の悪化か、NSAIDの副作用かわかりませんが、肝機能もAST/ALT 90/88 LDH854と上昇がみられたため、NSAID中止しPSL 40mg/日(0.8mg/BWkg)開始しまし た。 また病勢と関連するのか分かりませんが、フェリチンは38962とさらに上昇していま した。 先生方にご指摘いただいたIVLの可能性もあり骨髄検査をすることにし、皮膚生検も 皮膚科に依頼しました。
現在点滴、酸素などが全てとれ、食事摂取もしており 「先生やっぱり長く入院していないといけないんですか?  夫の世話もしないといけないんですよね」と 入院時と一転して、至極お元気にされております。

○ dementiaに関して 入院後に行ったMMSE17点、現在MMSE24点でした。 現在の意識状態はほぼ健常時と変わらないとご家族が いっておられます。 症状としてはなんとなくぼんやりしている、受け答えに ちぐはぐさがみられるといったような状況でした。 MRIに関しては、放射線科のレポートを引用しますと 「拡散強調画像にて右内包後脚に高信号強度が見られ、 T2強調画像、FLAIR画像でもわずかな腫脹を伴う小信号強度としてとらえられます。 前脈絡叢動脈に比較的新しい虚血梗塞の可能性があります。 脳梁体部後半にも高信号とらえられますが急性期のものとは断定できません」 ということでした。 神経内科Drに診てもらったところ、極軽度の左片麻痺(pure motor)はあり、 画像上、内包膝部にも梗塞がありそうで、そうすると 認知症のように思われた症状(意識障害?)は、 梗塞で説明がつきそうだということでした。
ステロイドに変更後、データー上Hbは横ばい、Plt・肝機能は改善傾向 となっています。 髄液は今週中に再検する予定です。
(by M先生)

2007年1月6日土曜日

最近のNew England Journal of Medicineの話題

 今週のNew England Journal of MedicineのClinical Problem Solvingは、「関節 症状・日光過敏・全身倦怠感」などを訴えて受診された45歳 女性の症例です。 (Free full textです) http://content.nejm.org/cgi/content/full/356/1/68
 最初のパラグラフでLupusを疑いましたが、抗核抗体陰性、それでも "Seronegative Lupus"の診断のもとHCQ(この薬について日本でpracticeしているとありがたみがよくわかりませんが・・・)が開始されてしまいます。
 それを批判する(?)discussantは "The diagnosis of systemic lupus erythematosus requires 4 of 11 clinical and laboratory criteria that this patient has not met. At this point, the working diagnosis should be an undifferentiated connective-tissue disease that responded clinically to hydroxychloroquine." と述べていますが、Lupusの診断の考え方として、それはいかがなものでしょうか?
 一旦HCQで諸症状は改善したのですが、4年後にMassiveな下痢で再受診、蓄便 (MKSAPなどを読んでいると出てきますが、日本のPracticeで見た事ありません)では明らかな脂肪便、そのうち精神症状が出てきて・・・ 読者はそこで今号のNEJMの目次を見直し、編集者のEditorial handlingにニンマリする仕組みになっています。
(by Rheum-dora)

 NEJMといえば12月21日の左腕の筋力低下を来たしたSLEという題名のものもなかなかです。 http://content.nejm.org/cgi/content/extract/355/25/2678
 入院中にMRI簡単に数えただけで8回取ってますし、Brain Biopsyも2回。ステロイ ドパルスのタイミングも冬眠している人が起きてきてひと言言いそうな感じで、感染症とSLE自体の鑑別が問題になりますがやはりCRPははかっていない(別に深い意味はありませんのできつい突っ込みはご勘弁ください)、などアメリカの医療が垣間見れます。
 最終的にはcaspofungin, voriconazole, clindamycin, atrovaquine, meropenem, vancomycin, pyrimethamineにステロイドパルスを加えて終結する症例です。僕は勉強になりました。
(by SLIHAR先生)

2007年1月5日金曜日

腸かんまく?Behcet

〔Case presentation by Rheum-dora〕
腸管Behcetと呼ばれる病態で、典型的には深く掘れた潰瘍が内視鏡的に確認されると思うのですが、過去にBehcet病の患者さんで「腹痛(特にTyphlitis 盲腸炎様)」 +「CTで腸管周囲の脂肪織濃度上昇」+「内視鏡的に所見なし」という症例を2例経験しました。

1例目は40代男性、口内炎+陰部潰瘍+皮膚症状の不全型Behcetの患者さん。
腹痛で何度も緊急受診しており、そのときのCTでは腸間周囲の脂肪織濃度上昇が特にCecum周囲に目立ちます。単純腹部X線写真ではいわゆる「ガスレス」様になること もあり、外科を巻き込んで騒ぎになる〔Guardingもあり、虫垂炎の穿孔と区別困難〕 のですが、ステロイドの一時的増量+抗菌薬投与(Meropenem)で数日の経過で著明 に改善します。腹痛著明な時期には下部消化管内視鏡を施行できていないのですが、 これまで施行した下部消化管内視鏡では特に所見を認めておりません。

2例目は20代女性、口内炎+陰部潰瘍+皮膚症状の不全型Behcetの患者さん。この方も同様の経過で、腹痛による緊急受診を繰り返しておられます。

いずれの症例も、一時的なステロイド増量に非常によく反応するのですが、維持療法が困難で、ステロイドが比較的高用量でもrelapseして緊急受診してこられるように思います。1症例目ではCyclosporin A併用でもステロイド減量に難渋していまし た。無理にsuppressionせずに、「発作のような痛み・不快感を感じたら」内服できるようにプレドニンを処方しておいて、近々の外来を受診してもらう、という方法でもよいのかな、と思いますが、いかがでしょうか。
また、これは「腹腔内に起きたpanniculitis」のような病態なのでしょうか。

(Comment 1 by K先生)
BDのPanniculitis全身のどこへでもおこりますね。
11月にEN、微熱、関節痛のコンサルトでBDだったのですが、periorbital cellulitisではと疑うほど目の周りが腫れた症例を経験しましたが、NSAIDsプラスコルヒチンで良くなりホットしていました。 腸管にも起こるのですね。Crohnと鑑別が非常に難しくASCA抗体が陽性になるBDも1例経験しましたが。

(Comment 2 by SLIHAR先生)
BDですが、レミケードが目だけじゃなくて、CNSにも効くようですから、これからますますステロイドは間欠投与になっていくんだと思います。腸にもきくでしょうし。
http://rheumatology.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/45/3/348
僕も、0.5 mg/kg/day 5日間とかで必要に応じて使っている患者さんもいます。

(Comment 3 by H先生)
僕は短期的なステロイド中等量投与はよい方法だと思いますが、発作が頻回な場合には積極的に免疫抑制剤を使用しています。やはり特殊病型や眼病変の発作の繰り返しは長期的に考えればリスキーですし、ステロイド投与が眼病変にあたえる影響も加味しなければなりませんから。
今後は生物学的製剤の使用によって、本邦におけるBDの治療ストラテジーも大きく変わるのではないかと期待しています。

2007年1月4日木曜日

RA活動性評価(RAPID)

RAPIDは患者さんからの情報(診察室の待ち時間に質問紙を埋めてもらえば良いので診察前にわかる!!)をもとにRAの活動性をみるToolとして有用なもの­ではないかということで私(Rheum-dora註:K先生)がNYUにいるときのメンターの一人Dr. Yasuf Yaziciとバンダービルト大学のDr. Pincusが提唱するものです。私も去年のEULARとACRで研究にくわえていただきました。

具体的には
RAPID3
= Pt global assessment of dz activity in cm(0-10)
+ Pt pain VAS(0-10)
+ mHAQ(通常8項目0 3で10point)
Total 30 pointで評価します。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=17083765&query_hl=1& amp;itool=pubmed_docsum

(by K先生)

Medscape 骨粗鬆症おすすめスライド

さて、みなさんMedScapeはおつかいとおもいますが、(面倒ですが、登録只です) http://www.medscape.com/ に、Osteoporosisのスライドレクチャーがいくつかあります。
http://www.medscape.com/viewprogram/5010 http://www.medscape.com/viewprogram/5401 http://www.medscape.com/viewprogram/4743
ぐらいがおすすめでしょうか?
ちなみに、レクチャー検索には、searchのところに、 osteoporosis slide と、slideを一緒に入れると細かい記事は省かれて便利です。
(by SLIHAR先生)

追記:
紹介した、
http://www.medscape.com/viewprogram/5401
もう一度見てみましたが、やはりちゃんとまとまっていると感心しました。ORとRRも 間違っていませんし。おすすめです。
(by SLIHAR先生)

RA診療のTrivial Q&A 3

Q:
「定時内服のNSAIDを中止するテクニックは?」
小生が引き継いだ外来では「MTX 4 mg/wk+ボル○レンSR 2Cp分2+プレ○ニン 10 mg/day+ザン○ック(通常量)」のような処方がされている患者さんが複数いて、まずはMTXをdose upし、一応PPIに変更し、プレ○ニンを慎重に減量し・・・と処方を 徐々に変更しているところですが、患者さんの心理的な抵抗もあってボル○レンやロキ○ニンを中止できないことが多いです。これは仕方ないことなのでしょうか?

A1:
NSAIDに関しては、抵抗のある人には次のようにしています。まずはロ○ソ○ン(コ ンビニではありません)を1日3回で使っている人には、30日分の処方箋なら1日3回まで1回1錠で90回分の頓用として処方します。つまり、最初は定期処方と同じ量を書き ます。で、副作用とその限られた作用をきちんと説明して減らしてみてくださいといっておくと、大抵は少しずつ量が減ってきて結局ほとんどいらなくなる人が多いです。結局、NSAIDを毎日飲まなくてはいけない人はDMARD欠乏症のことも多いですの で、NSAIDで症状を抑えているうちにNon-Erosive Eraに時代遅れというのは患者さんも望んでいな いことと思います。
(by SLIHAR先生)

A2:
NSAIDについてはSLIHAR先生と全く同意見です。僕はもっとテキトウな人間なので、「このクスリは、痛くなかったら勝手に減らしたり、止めちゃったりしていいから」と一言言うだけです。本当に痛みが無い人なら、大抵は次の外来で「あ、もうたくさん余ってるんで、いいです」といってくれます。それでも NSAIDを止めない人は、「医者に言うと面倒だから言わないけど、RAが完全には沈静化していないため、本当はかなり痛い」とか、「腰痛がひどいので 服用していたい」とか、大抵何かの理由があると思います。
(by H先生)

RA診療のTrivial Q&A 2

Q:
「指先のMCP関節の腫脹をケナコルト関節注射で『散らす』か」
中~大関節の調子は非常によいにもかかわらず、両側2-3MCP関節の腫脹が残る場 合、ケナコルトの関節注射で「炎症を散らす」ことを時々やっていますが、患者さん によって評判はまちまちです。場合によっては「お試し」と称して複数腫脹している 小関節の1つだけにケナコルトを注射し、次の外来でその他の小関節の腫脹に注射す るかどうかを患者さんに決めてもらったりしていますが、これは結局一時しのぎにす ぎないのでしょうか?やはり注射で「散らす」と同時に(例えば)Methotrexateも dose upする必要があるのでしょうか?
Q補遺:関節注射の日は「お風呂をやめて」もらっていますか?(私は全くナンセン スだと思うのですが・・・)
(by Rheum-dora)

A1:
ケナコルトに関しては、もし今からIntra-articular injectionをはじめようという 先生方がいれば、膝以外には注意が必要です。なれてくればいいのですが、漏れたと きに脂肪組織の萎縮などトラブルの元になります。でも、しっかり関節に入れば一番 長持ちして良く効きます。なれるまで、リンデロンでお茶を濁すことも可能です。 僕は原則、指とか手首には30Gで注射していますのでお風呂はOKと思っています。3 歩歩けばアナはふさがるというのは言い過ぎかもしれませんが・・・
リドカインと1:1希釈するとうちやすいです。
MTXのドースアップが毎回必要かはむずかしいところです。でも、これをすることによって、一気に炎症を下げてMTXの有益性やTNF製剤で維持しやすくするという効果はあると思います。IA単独で治療しているのでなければ、散らすとか一時的というほど自虐的な治療でもないかと思います。
(by SLIHAR先生)

A2:
関節注射については、totalの疾患活動性が十分低下しているにもかかわらず、一過性の単関節炎のためにQOLが低下している症例には、あまり躊躇せずホイホイと関節注射していますが、すぐに再燃してしまう場合や、手指関節のあちこちが腫脹しているような場合には、MTXの増量や生物学的製剤の導入 を積極的に勧めています。
(by H先生)

RA診療のTrivial Q&A 1

Q:
「関節腫脹が目立たず、炎症反応も低値なのに、圧痛関節数・Patient's VASのためにDAS28が高い症例」 例えばTJC 20+SJC 0+ESR 10+VAS 80で DAS28 ESR 5.24といった感じ。
こういった症例でMethotrexateを増量しますか?
(by Rheum-dora)

A1:
http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/abstract/113490201/ABSTRACT
ということで、やはりCRPも関節腫脹もなくても活動性のある人は昔からいるよう で、そこを経験でやっていたのですが、実感をつかむにはMRIやMMP3などの新しい (MMP3は僕にはスゴク新しいです)検査を導入して研修していくことも可能だとおも います。
でも、
http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/abstract/113383833/ABSTRACT
とは矛盾しますね。K先生おすすめのRAPIDなどは患者さんからの情報だけでの フォローですから、MRI、MMP3の逆を行きますが、これでもRheum-dora先生は正しいことに なります。
(by SLIHAR先生)

A2:
痛みだけを強烈に訴える関節リウマチの患者さんは確かに結構いますよね。
僕はなかば自己流ですが、
1. 肉眼所見に十分反映されず、さらに局所に限定された関節炎にともなう疼痛
2. 関節破壊の結果として生じる力学的な疼痛
3. 心因反応
以上の3種類を考えながら対応する事にしています。
関節腫脹がはっきりしなくても、CRP以外の炎症反応(たとえばα1-グロブリン分画とか、α2-グロブリン分画とか)が微増していて、MTXを増量したら痛みもよくなった、なんていう症例は結構多いように思います。痛み閾値は個々で異なりますから、炎症反応が非常に地味でも強烈に痛みを感じるという のはあり得る事ではないでしょうか。ですので、僕はRheum-dora先生が書いていらっしゃる症例は1. に当てはまるのじゃないかと予想しますし、MTXの増量は関節破壊防止と言う観点から考えても至極真っ当な判断だと思います。
炎症が完全におさまっていても、関節破壊、運動時の疼痛が強い症例なら、2. 関節破壊の結果として生じる力学的な疼痛が多いのでNSAIDを使用してなんとかすることにしています。(欧米ではブプレノルフィンの貼付製剤なんかを使うようですね)僕を含め、内科系のリウマチ専門医は関節X線の評価がおろそかになりやすいので、これは自戒の意味も込めて挙げておきます。
しかし、困るのは関節破壊もない、腫脹もない、炎症もまったくない、でも圧痛は強烈、という3. 心因反応の要素が強い症例ですよね。これには試験的経験的に抗うつ薬を使用してみることにしています。エビデンスも何もないような話ですが、少なくとも 僕はこれでかなりうまくいってます。
(by H先生)