Clinical course:
Ceftriaxone 1g/日で症状は速やかに改善。
咽頭の淋菌PCR陽性のみで、培養では捕まりませんでした。
(by Rheum-dora, courtesy of Dr. Y@ID, TMH-K)
2007年10月18日木曜日
若年男性の急性多発関節炎(1)
Brief summary:
生来健康な20歳日本人男性、フィリピンより帰国後に発熱、咽頭痛、多発関節炎をきたした。
2007年10月1日よりフィリピンに友人4人と旅行、現地で性交渉あり。コンドームは使用したが、途中で破れたとのこと。連日riskある行動を繰り返し、4日に帰国。5日より、咽頭痛、左頚部の疼痛、39度台の発熱。近医よりロキソニン、PL顆粒処方されるも改善せず。6日より、両手の関節痛、7日には足関節にまで拡大。同日某病院ER受診、入院精査となる。ちなみに、心エコーはTTEでno vegitation、尿中淋菌、クラミジアPCRは陰性。血液培養は4セット陰性。尿培養は1セット陰性。LPは施行せず。
初診時WBC 9200, CRP 7.2、HBsAg、HCV-Ab、HIV-Ab共に陰性であった。
手の画像を別掲します。
(by Rheum-dora)
生来健康な20歳日本人男性、フィリピンより帰国後に発熱、咽頭痛、多発関節炎をきたした。
2007年10月1日よりフィリピンに友人4人と旅行、現地で性交渉あり。コンドームは使用したが、途中で破れたとのこと。連日riskある行動を繰り返し、4日に帰国。5日より、咽頭痛、左頚部の疼痛、39度台の発熱。近医よりロキソニン、PL顆粒処方されるも改善せず。6日より、両手の関節痛、7日には足関節にまで拡大。同日某病院ER受診、入院精査となる。ちなみに、心エコーはTTEでno vegitation、尿中淋菌、クラミジアPCRは陰性。血液培養は4セット陰性。尿培養は1セット陰性。LPは施行せず。
初診時WBC 9200, CRP 7.2、HBsAg、HCV-Ab、HIV-Ab共に陰性であった。
手の画像を別掲します。
(by Rheum-dora)
2007年9月20日木曜日
Harvard CME course: Advances in Rheumatology
Rheum-dora@ボストンです。HarvardのContinuous Medical Education course: Advances in Rheumatologyに参加しております。
小生は最終日午前のセッションをスキップして帰国しますが、非常に興味深い講義を受けることができました。MMFとRituximabは今後使いこなせないと話にならんな~と思いました(日本でそうするには色々問題はありますが)。
肺疾患を合併したRA症例は全般的にあまりないようで、"Panel on RA"でDrs Weinblatt, Moreland, Ritchlinに質問したのですが、
〔東京都立K病院 M先生の質問〕 RA, Sjogrenでdiffuse ILDのある症例のManagementは?
Dr. W「...経験ある?」
Dr. M「いや...」
Dr. R「うちで一例、ILDのある症例にArava使ってるけど...」
Dr. W「でも日本からSevere lung injuryの報告があるよね」
Dr. M「うーん...」
Dr. W「...次の質問いこうか」
〔小生の質問〕 肺のNTMが治療にも関わらずSlowly progressiveなRA症例のManagementは?
Dr. W「どうしよっか?」
Dr. M「うーん...」
Dr. W「Real world questionだよね...」
Dr. R「Methotrexateかな?」
Dr. M「うーん...」
Dr. W「...次の質問、いこうか」
と、ちゃんとした解答は得られなかったのでした。
面白かったのは、Dr.Weinblattが「Brigham WomenでRemicadeを使っている患者の平均Doseは 5mg/kg q6wkだ」「逆にClinical remissionの症例では積極的にBiologicsの間隔を空けて離脱を考えている」とコメントしていた事です。後者については会場の Rheumatologistsの間で意見が分かれていました。最近の「分子リウマチ」で、日本医大名誉教授 吉野先生が(自分の開業してからの Practiceについての話題で)「エンブレルも多くの症例で間隔を空けて中止することが可能である」とコメントしておられ、Expert's opinionとして傾聴に価すると思います。ベースにしっかりした量のMethotrexateを使用することが前提になりそうですが...
RA治療におけるSystemic Glucocorticoidには、否定的な意見が多く聞かれました。COBRAみたいなことはあんまりしないと。欧州とのPractice patternの違いでしょうか。
Goutのセッションでは、以前本MLでH先生にご教示いただいたAcute gout attackにKineret(attackから3日間)にも言及されており、会場でも使用経験のあるDrが1名いました(胃潰瘍+腎不全の症例)。
Myositis のセッションでは、Hyper-CK-emiaの症例で軽度の上昇が持続していても、症状がなければ経過を追うだけで"Totally acceptable"だと演者の先生は言っておられました(U. PittsburghのDr. Oddis)。もし何か検査を追加するとすればEMGで、それがOKなら良いでしょうと。Statin内服中でCKの軽度上昇が持続してもStatinを 中止する必要はなく、上昇傾向が見られたら"Coenzyme Q10"を使用する、とも(実際米国のCardiologistはそのようにしているようです)。
"Corticosteroid in Myositis"の以下のスライド内容は若干意見が分かれるかと思いましたが、会場から特に質問は出ませんでした。
・Begin divided dose prednisone at 60 mg daily (20 mg tid)
・Continue until serum CK falls to normal
・Consolidate to single morning dose
・Taper by 25% existing dose q 3-4 weeks to 5-10 mg daily maintainance dose
・Continue until active disease suppressed one year
・Improvement in strength lags behind CK improvement
What's new in basic scienceのセッションでは猫も杓子もTh17, CD4+CD25+FOXP3+Tregといった昨今の風潮が正確に反映(?)されていました。日本の坂口先生のグループからの報告が多く紹介されていました。
小生は最終日午前のセッションをスキップして帰国しますが、非常に興味深い講義を受けることができました。MMFとRituximabは今後使いこなせないと話にならんな~と思いました(日本でそうするには色々問題はありますが)。
肺疾患を合併したRA症例は全般的にあまりないようで、"Panel on RA"でDrs Weinblatt, Moreland, Ritchlinに質問したのですが、
〔東京都立K病院 M先生の質問〕 RA, Sjogrenでdiffuse ILDのある症例のManagementは?
Dr. W「...経験ある?」
Dr. M「いや...」
Dr. R「うちで一例、ILDのある症例にArava使ってるけど...」
Dr. W「でも日本からSevere lung injuryの報告があるよね」
Dr. M「うーん...」
Dr. W「...次の質問いこうか」
〔小生の質問〕 肺のNTMが治療にも関わらずSlowly progressiveなRA症例のManagementは?
Dr. W「どうしよっか?」
Dr. M「うーん...」
Dr. W「Real world questionだよね...」
Dr. R「Methotrexateかな?」
Dr. M「うーん...」
Dr. W「...次の質問、いこうか」
と、ちゃんとした解答は得られなかったのでした。
面白かったのは、Dr.Weinblattが「Brigham WomenでRemicadeを使っている患者の平均Doseは 5mg/kg q6wkだ」「逆にClinical remissionの症例では積極的にBiologicsの間隔を空けて離脱を考えている」とコメントしていた事です。後者については会場の Rheumatologistsの間で意見が分かれていました。最近の「分子リウマチ」で、日本医大名誉教授 吉野先生が(自分の開業してからの Practiceについての話題で)「エンブレルも多くの症例で間隔を空けて中止することが可能である」とコメントしておられ、Expert's opinionとして傾聴に価すると思います。ベースにしっかりした量のMethotrexateを使用することが前提になりそうですが...
RA治療におけるSystemic Glucocorticoidには、否定的な意見が多く聞かれました。COBRAみたいなことはあんまりしないと。欧州とのPractice patternの違いでしょうか。
Goutのセッションでは、以前本MLでH先生にご教示いただいたAcute gout attackにKineret(attackから3日間)にも言及されており、会場でも使用経験のあるDrが1名いました(胃潰瘍+腎不全の症例)。
Myositis のセッションでは、Hyper-CK-emiaの症例で軽度の上昇が持続していても、症状がなければ経過を追うだけで"Totally acceptable"だと演者の先生は言っておられました(U. PittsburghのDr. Oddis)。もし何か検査を追加するとすればEMGで、それがOKなら良いでしょうと。Statin内服中でCKの軽度上昇が持続してもStatinを 中止する必要はなく、上昇傾向が見られたら"Coenzyme Q10"を使用する、とも(実際米国のCardiologistはそのようにしているようです)。
"Corticosteroid in Myositis"の以下のスライド内容は若干意見が分かれるかと思いましたが、会場から特に質問は出ませんでした。
・Begin divided dose prednisone at 60 mg daily (20 mg tid)
・Continue until serum CK falls to normal
・Consolidate to single morning dose
・Taper by 25% existing dose q 3-4 weeks to 5-10 mg daily maintainance dose
・Continue until active disease suppressed one year
・Improvement in strength lags behind CK improvement
What's new in basic scienceのセッションでは猫も杓子もTh17, CD4+CD25+FOXP3+Tregといった昨今の風潮が正確に反映(?)されていました。日本の坂口先生のグループからの報告が多く紹介されていました。
2007年7月1日日曜日
血性関節液の鑑別
○ 外来で現在進行形の症例です。アドバイスいただけると幸いです。
【症例】 41歳、男性、スーパー鮮魚部勤務
【主訴】 左膝痛
【現病歴】
2006年末、徐々に左膝の腫脹と疼痛が出現。
近医整形外科を受診。左膝レントゲン上軟骨のすり減りあり、関節穿刺にて黄色の関節液また採血でリウマチらしさはないと言われ、鎮痛剤を処方された。
その後も左膝の腫脹は少しあったが放置していた。
2007年6月始め頃より、徐々に左膝の腫脹と疼痛が増強。
6/13、当院整形外科受診。左膝穿刺したところhttp://rheumatology.at.webry.info/200706/article_5.html
6/15、内科受診。再度左膝を穿刺した。
外傷や出血傾向のエピソードなし。
【ROS】
食欲不振あり。体重減少は半年間で5kg。もともと汗かきだが寝汗もかく。咳なし。痰なし。
【既往歴】
高血圧症があるも未治療。糖尿病なし。内服なし。
【生活歴】
機会飲酒。タバコは20本/日。健康食品摂取なし。両親との3人暮らし。独身。恋人はいない。最近風俗には行かないが、若い頃は遊んでいた。ペットなし。最近の旅行なし。
【家族歴】
父:両足が不自由(詳細不明)、母:高血圧症
悪性腫瘍なし。結核なし。
【身体所見】
体温37.2度。血圧168/118。脈拍108、整。
頭頸部・胸・腹部正常。両手指OA。左膝関節には熱感・圧痛・腫脹あり、外反変形している。両下肢筋、特に左下腿は萎縮している。両足に白癬あり。
【検査所見】
採血:WBC 11200(Neutro78%)、Hgb 12.9、Plt 42.1万。
ALP 396、CRP 1.97。ESR 57mm/h。凝固系正常
検尿:蛋白陽性
CXR:脊柱側彎あり
左膝レントゲン:関節裂隙の狭小化、外反膝
両手レントゲン:右2指MCP関節破壊あり
左膝関節液:血性。一般細菌培養陰性、抗酸菌塗抹陰性、結核菌PCR陰性、細胞診class2、抗酸菌・真菌培養検査中。
血液培養(抗酸菌も含む):検査中
【経過】
chronic
【問題点】
左膝関節炎・変形、両下肢筋萎縮、血性関節液、右2指MCP関節破壊、炎症反応、食欲不振、体重減少
【鑑別診断】
結核性関節炎、真菌性関節炎、絨毛結節性滑膜炎、シャルコー関節症
【経過】
6/22より、結核性関節炎と真菌性関節炎を疑い、INH500mg、RIF450mg、PZA2g、Flu200mgで治療開始。近日中に左膝MRIと左膝滑膜生検を予定。
(by Y先生)
☆ 今回の血性関節液の症例についてですが、リウマチ・膠原病については全くの素人ですが、感染症の観点からはいくつか思いついたことがありますので、参考になるか分かりませんが、意見を述べさせていただきます。
慢性に経過する感染性の関節炎の鑑別診断としては、既にY先生が挙げられていますように結核性関節炎と真菌性関節炎があります。
結核性関節炎は股関節や膝関節などの荷重のかかる関節の単関節炎が多く、65歳以上が高齢者に発症しやすいようです。 臨床症状や画像所見で確定することは難しく、確定診断は細菌検査または病理にて行われます。 関節液は好中球優位な中等度の白血球の上昇と糖の低下、蛋白の上昇をきたしますが、非特異的です。 過去のreviewによれば関節液の培養の感度は79%ですが、滑膜生検の組織培養の感度は94%です(Am J Med 1976;61:277-82 )。
したがって、関節液の培養が陰性でも否定はできませんの で、組織をとることが望ましいと言えます。
関節液のPCRはデータがないのでよく分かりませんが、喀痰で塗抹陰性例における感度が50%前後であることを考えると塗抹陰性の場合はPCR陰性でも否定はできないと思います。
治療は、日本ではINH, RFP, EB, PZAの4剤が必要です。ご存知 のように結核の治療は耐性菌の出現を抑制するために感受性のある薬剤が最低2剤必要です。但し、PZAの耐性菌抑制効果は証明されていませんのでPZA+1剤という組み合わせは避けるべきです。
INH, RFP, PZAの組み合わせで、もしINHに耐性であった場合、RFP+PZAの2剤になるためRFPが耐性化する危険があります。 EBが必要かどうかはINHの自然耐性率によります。ガイドラインでは耐性率が4%以上の地域では、EBの追加が推奨されてい ます。
1997年に結核療法研究協議会はINH耐性は4%を越えた(4.4 %)と報告しています。したがって日本ではEBの追加が必要です。
真菌性関節炎についてですが、真菌の中で最も頻度が高いのはカンジダです。カンジダによる関節炎は外傷によるものでなければ血行性感染ですので、カンジダ血症のリスクとなる好中球減少症、中心静脈カテーテル、IV drug userなどが危険因子となります。危険因子が全くない人でも発症することはあるようですが、かなり稀なようです。これまで2つのケースレポート (J Bone Joint Surg Br 2003;85:734-5, Clin Rheumatol 1998;17:393-4 )がありますが、そのうちの1つでは"We believe that this is the first report of such a case. "と記載されています(Clin Rheumatol 1998;17:393-4)。
症状や画像も非特異的であり、関節液の所見も好中球優位な中等度の白血球の上昇と糖の低下、蛋白の上昇であり、非特異的です。グラム染色の感度は20%くらいですが、培養の感度はもっと良いようですが、具体的な数字は分かりませんでした。
治療については十分検証されていませんが、最も有効性が証明されているのがAmphotericin Bです。FLCZは最近のnon-albicans の増加を考えると経験的治療では少しリスクがあるように思います。MCFGは多分効くと思うのですが、臨床データがありません。
これらのことを踏まえた上での今回のケースについての私見ですが、既に予定されているようですが、滑膜生検は必須の検査 だと思います。特に結核の診断においては組織はあった方が望 ましいです(もし待てる状況であれば抗結核薬は生検後の方が良かったと思います)。また外傷、出血傾向のない患者の血性関節液は腫瘍も鑑別に挙がると思いますのでそのためにも組織は必要だと思います。
抗結核薬は継続するのであればEBを加えた方がいいです。あと体格が普通であればINHは300mg、PZAは1.5gで十分だと思いま す。
真菌については危険因子がなければ可能性は低いので抗真菌薬は中止しても良いと思います。
感染症の観点からとりあえず思いついたことは以上です。よろしければまた経過を教えて下さい。
(by N先生)
☆ すみません。ちゃんと読めていないのですが、ちゃちゃだけ入れて居眠りしようと思います。
鮮魚と書いてあるので、Mycobacterium marinumによるSeptic arthritisは どうでしょうか?
PMID: 8064742
PMID: 10402076
(by SLIHAR先生@3pm)
☆ 血性関節液をみたら 外傷(靭帯損傷、骨折等の何らかの外傷、医原性も含む)、腫瘍、出血傾向の有無でしょうか。また炎症性の関節炎で血管がEngorgeしていればどんな病気でもおこしていいということです。
慢性の単関節炎の鑑別 → Kellyにもまずは感染(特に結核)腫瘍(特に色素性絨毛結節性滑膜炎)、あとはOA,結晶性、まれだがRA,SpAと書かれていました。
(by K先生)
○ N先生、具体的なアドバイスをありがとうございました。 SLIHAR先生、"鮮魚"からのアプローチ勉強になりました。K先生、血性関節液と慢性単関節炎からの鑑別は私と同様の考え方です。
PubMedで"Tuberculous arthritis","Hemorrhagic synovial fluid"や"Fungal arthritis"で掛け合わせて検索しても適当な論文がHitしません。しかし、上野先生の「リウマチ膠原病診療ビジュアルテキスト」には、「血性関節液の鑑別診断」として 最後に"TB arthritis"が挙げられています。
ところで左膝のMRI検査を行いました。結果を見た整形外科医の話では、 "滑膜炎、骨・軟骨破壊を認める。腫瘍なし"とのことでした。 滑膜生検はなるべく早く行えるように努力してみます。 その前に関節液培養から抗酸菌が検出されないかなあと少し期待していますが・・・。
あと、右2指MCP関節破壊も気になりますが、TBなら手指の関節を侵すことがあるのでこれも説明がつきます。
(by Y先生)
【症例】 41歳、男性、スーパー鮮魚部勤務
【主訴】 左膝痛
【現病歴】
2006年末、徐々に左膝の腫脹と疼痛が出現。
近医整形外科を受診。左膝レントゲン上軟骨のすり減りあり、関節穿刺にて黄色の関節液また採血でリウマチらしさはないと言われ、鎮痛剤を処方された。
その後も左膝の腫脹は少しあったが放置していた。
2007年6月始め頃より、徐々に左膝の腫脹と疼痛が増強。
6/13、当院整形外科受診。左膝穿刺したところhttp://rheumatology.at.webry.info/200706/article_5.html
6/15、内科受診。再度左膝を穿刺した。
外傷や出血傾向のエピソードなし。
【ROS】
食欲不振あり。体重減少は半年間で5kg。もともと汗かきだが寝汗もかく。咳なし。痰なし。
【既往歴】
高血圧症があるも未治療。糖尿病なし。内服なし。
【生活歴】
機会飲酒。タバコは20本/日。健康食品摂取なし。両親との3人暮らし。独身。恋人はいない。最近風俗には行かないが、若い頃は遊んでいた。ペットなし。最近の旅行なし。
【家族歴】
父:両足が不自由(詳細不明)、母:高血圧症
悪性腫瘍なし。結核なし。
【身体所見】
体温37.2度。血圧168/118。脈拍108、整。
頭頸部・胸・腹部正常。両手指OA。左膝関節には熱感・圧痛・腫脹あり、外反変形している。両下肢筋、特に左下腿は萎縮している。両足に白癬あり。
【検査所見】
採血:WBC 11200(Neutro78%)、Hgb 12.9、Plt 42.1万。
ALP 396、CRP 1.97。ESR 57mm/h。凝固系正常
検尿:蛋白陽性
CXR:脊柱側彎あり
左膝レントゲン:関節裂隙の狭小化、外反膝
両手レントゲン:右2指MCP関節破壊あり
左膝関節液:血性。一般細菌培養陰性、抗酸菌塗抹陰性、結核菌PCR陰性、細胞診class2、抗酸菌・真菌培養検査中。
血液培養(抗酸菌も含む):検査中
【経過】
chronic
【問題点】
左膝関節炎・変形、両下肢筋萎縮、血性関節液、右2指MCP関節破壊、炎症反応、食欲不振、体重減少
【鑑別診断】
結核性関節炎、真菌性関節炎、絨毛結節性滑膜炎、シャルコー関節症
【経過】
6/22より、結核性関節炎と真菌性関節炎を疑い、INH500mg、RIF450mg、PZA2g、Flu200mgで治療開始。近日中に左膝MRIと左膝滑膜生検を予定。
(by Y先生)
☆ 今回の血性関節液の症例についてですが、リウマチ・膠原病については全くの素人ですが、感染症の観点からはいくつか思いついたことがありますので、参考になるか分かりませんが、意見を述べさせていただきます。
慢性に経過する感染性の関節炎の鑑別診断としては、既にY先生が挙げられていますように結核性関節炎と真菌性関節炎があります。
結核性関節炎は股関節や膝関節などの荷重のかかる関節の単関節炎が多く、65歳以上が高齢者に発症しやすいようです。 臨床症状や画像所見で確定することは難しく、確定診断は細菌検査または病理にて行われます。 関節液は好中球優位な中等度の白血球の上昇と糖の低下、蛋白の上昇をきたしますが、非特異的です。 過去のreviewによれば関節液の培養の感度は79%ですが、滑膜生検の組織培養の感度は94%です(Am J Med 1976;61:277-82 )。
したがって、関節液の培養が陰性でも否定はできませんの で、組織をとることが望ましいと言えます。
関節液のPCRはデータがないのでよく分かりませんが、喀痰で塗抹陰性例における感度が50%前後であることを考えると塗抹陰性の場合はPCR陰性でも否定はできないと思います。
治療は、日本ではINH, RFP, EB, PZAの4剤が必要です。ご存知 のように結核の治療は耐性菌の出現を抑制するために感受性のある薬剤が最低2剤必要です。但し、PZAの耐性菌抑制効果は証明されていませんのでPZA+1剤という組み合わせは避けるべきです。
INH, RFP, PZAの組み合わせで、もしINHに耐性であった場合、RFP+PZAの2剤になるためRFPが耐性化する危険があります。 EBが必要かどうかはINHの自然耐性率によります。ガイドラインでは耐性率が4%以上の地域では、EBの追加が推奨されてい ます。
1997年に結核療法研究協議会はINH耐性は4%を越えた(4.4 %)と報告しています。したがって日本ではEBの追加が必要です。
真菌性関節炎についてですが、真菌の中で最も頻度が高いのはカンジダです。カンジダによる関節炎は外傷によるものでなければ血行性感染ですので、カンジダ血症のリスクとなる好中球減少症、中心静脈カテーテル、IV drug userなどが危険因子となります。危険因子が全くない人でも発症することはあるようですが、かなり稀なようです。これまで2つのケースレポート (J Bone Joint Surg Br 2003;85:734-5, Clin Rheumatol 1998;17:393-4 )がありますが、そのうちの1つでは"We believe that this is the first report of such a case. "と記載されています(Clin Rheumatol 1998;17:393-4)。
症状や画像も非特異的であり、関節液の所見も好中球優位な中等度の白血球の上昇と糖の低下、蛋白の上昇であり、非特異的です。グラム染色の感度は20%くらいですが、培養の感度はもっと良いようですが、具体的な数字は分かりませんでした。
治療については十分検証されていませんが、最も有効性が証明されているのがAmphotericin Bです。FLCZは最近のnon-albicans の増加を考えると経験的治療では少しリスクがあるように思います。MCFGは多分効くと思うのですが、臨床データがありません。
これらのことを踏まえた上での今回のケースについての私見ですが、既に予定されているようですが、滑膜生検は必須の検査 だと思います。特に結核の診断においては組織はあった方が望 ましいです(もし待てる状況であれば抗結核薬は生検後の方が良かったと思います)。また外傷、出血傾向のない患者の血性関節液は腫瘍も鑑別に挙がると思いますのでそのためにも組織は必要だと思います。
抗結核薬は継続するのであればEBを加えた方がいいです。あと体格が普通であればINHは300mg、PZAは1.5gで十分だと思いま す。
真菌については危険因子がなければ可能性は低いので抗真菌薬は中止しても良いと思います。
感染症の観点からとりあえず思いついたことは以上です。よろしければまた経過を教えて下さい。
(by N先生)
☆ すみません。ちゃんと読めていないのですが、ちゃちゃだけ入れて居眠りしようと思います。
鮮魚と書いてあるので、Mycobacterium marinumによるSeptic arthritisは どうでしょうか?
PMID: 8064742
PMID: 10402076
(by SLIHAR先生@3pm)
☆ 血性関節液をみたら 外傷(靭帯損傷、骨折等の何らかの外傷、医原性も含む)、腫瘍、出血傾向の有無でしょうか。また炎症性の関節炎で血管がEngorgeしていればどんな病気でもおこしていいということです。
慢性の単関節炎の鑑別 → Kellyにもまずは感染(特に結核)腫瘍(特に色素性絨毛結節性滑膜炎)、あとはOA,結晶性、まれだがRA,SpAと書かれていました。
(by K先生)
○ N先生、具体的なアドバイスをありがとうございました。 SLIHAR先生、"鮮魚"からのアプローチ勉強になりました。K先生、血性関節液と慢性単関節炎からの鑑別は私と同様の考え方です。
PubMedで"Tuberculous arthritis","Hemorrhagic synovial fluid"や"Fungal arthritis"で掛け合わせて検索しても適当な論文がHitしません。しかし、上野先生の「リウマチ膠原病診療ビジュアルテキスト」には、「血性関節液の鑑別診断」として 最後に"TB arthritis"が挙げられています。
ところで左膝のMRI検査を行いました。結果を見た整形外科医の話では、 "滑膜炎、骨・軟骨破壊を認める。腫瘍なし"とのことでした。 滑膜生検はなるべく早く行えるように努力してみます。 その前に関節液培養から抗酸菌が検出されないかなあと少し期待していますが・・・。
あと、右2指MCP関節破壊も気になりますが、TBなら手指の関節を侵すことがあるのでこれも説明がつきます。
(by Y先生)
2007年6月14日木曜日
過去の勉強会資料など(薄目で眺めて下さい)
過去に当科(Rheum-dora所属の某大学病院リウマチ科)で小生(Rheum-dora)が作成した勉強会資料をアップします.これまでGoogleグループ機能からのファイルdownloadがうまくいかない先生方が多く不評でしたが,この機会にdownloadして,容赦ないツッコミを入れてください(汗).
すでにOut-of-dateなものも見受けられます…
肺障害合併RAにおけるDMARDs
ウェブリンクダウンロード
結合組織疾患における血球貪食症候群
ウェブリンクダウンロード
生物学的製剤時代の結核
ウェブリンクダウンロード
Sjogren症候群の中枢神経病変(NMO-IgG)
ウェブリンクダウンロード
抗リン脂質抗体:Beyond Hypercoagulation
ウェブリンクダウンロード
結構,勉強会のあった時期に発表されたReviewsのパッチワークだったりするので,笑わないで下さいまし ><
すでにOut-of-dateなものも見受けられます…
肺障害合併RAにおけるDMARDs
ウェブリンクダウンロード
結合組織疾患における血球貪食症候群
ウェブリンクダウンロード
生物学的製剤時代の結核
ウェブリンクダウンロード
Sjogren症候群の中枢神経病変(NMO-IgG)
ウェブリンクダウンロード
抗リン脂質抗体:Beyond Hypercoagulation
ウェブリンクダウンロード
結構,勉強会のあった時期に発表されたReviewsのパッチワークだったりするので,笑わないで下さいまし ><
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