2007年1月5日金曜日

腸かんまく?Behcet

〔Case presentation by Rheum-dora〕
腸管Behcetと呼ばれる病態で、典型的には深く掘れた潰瘍が内視鏡的に確認されると思うのですが、過去にBehcet病の患者さんで「腹痛(特にTyphlitis 盲腸炎様)」 +「CTで腸管周囲の脂肪織濃度上昇」+「内視鏡的に所見なし」という症例を2例経験しました。

1例目は40代男性、口内炎+陰部潰瘍+皮膚症状の不全型Behcetの患者さん。
腹痛で何度も緊急受診しており、そのときのCTでは腸間周囲の脂肪織濃度上昇が特にCecum周囲に目立ちます。単純腹部X線写真ではいわゆる「ガスレス」様になること もあり、外科を巻き込んで騒ぎになる〔Guardingもあり、虫垂炎の穿孔と区別困難〕 のですが、ステロイドの一時的増量+抗菌薬投与(Meropenem)で数日の経過で著明 に改善します。腹痛著明な時期には下部消化管内視鏡を施行できていないのですが、 これまで施行した下部消化管内視鏡では特に所見を認めておりません。

2例目は20代女性、口内炎+陰部潰瘍+皮膚症状の不全型Behcetの患者さん。この方も同様の経過で、腹痛による緊急受診を繰り返しておられます。

いずれの症例も、一時的なステロイド増量に非常によく反応するのですが、維持療法が困難で、ステロイドが比較的高用量でもrelapseして緊急受診してこられるように思います。1症例目ではCyclosporin A併用でもステロイド減量に難渋していまし た。無理にsuppressionせずに、「発作のような痛み・不快感を感じたら」内服できるようにプレドニンを処方しておいて、近々の外来を受診してもらう、という方法でもよいのかな、と思いますが、いかがでしょうか。
また、これは「腹腔内に起きたpanniculitis」のような病態なのでしょうか。

(Comment 1 by K先生)
BDのPanniculitis全身のどこへでもおこりますね。
11月にEN、微熱、関節痛のコンサルトでBDだったのですが、periorbital cellulitisではと疑うほど目の周りが腫れた症例を経験しましたが、NSAIDsプラスコルヒチンで良くなりホットしていました。 腸管にも起こるのですね。Crohnと鑑別が非常に難しくASCA抗体が陽性になるBDも1例経験しましたが。

(Comment 2 by SLIHAR先生)
BDですが、レミケードが目だけじゃなくて、CNSにも効くようですから、これからますますステロイドは間欠投与になっていくんだと思います。腸にもきくでしょうし。
http://rheumatology.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/45/3/348
僕も、0.5 mg/kg/day 5日間とかで必要に応じて使っている患者さんもいます。

(Comment 3 by H先生)
僕は短期的なステロイド中等量投与はよい方法だと思いますが、発作が頻回な場合には積極的に免疫抑制剤を使用しています。やはり特殊病型や眼病変の発作の繰り返しは長期的に考えればリスキーですし、ステロイド投与が眼病変にあたえる影響も加味しなければなりませんから。
今後は生物学的製剤の使用によって、本邦におけるBDの治療ストラテジーも大きく変わるのではないかと期待しています。

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